鏑木商舗とは

当舗は文政五年(1822)、徳川11代将軍の治世に九谷焼最初の商家として金沢で開業し、以来約200年にわたって暖簾を守っております。
創業当時は、古九谷の廃窯から110年余り絶えていた九谷焼を再興しようとの気運が高まっていた時代です。
当舗では加賀藩の意向を受け、各窯から仕入れた製品を販売するだけでなく自家工房に名工を集めて絵付けを行い、九谷焼の藩内普及の一翼を担いました。
明治・大正時代に入ると、国内での展覧会に加えて海外の万国博覧会にも出品し、数多くの賞と「鏑木の九谷は一級品」との名声を獲得しました。
私は歴代当主の意志を継ぎ、「九谷焼の価値を世界に広める」との創業の精神に徹し、世界に向けて九谷焼の新しい可能性を発信するべく日々挑戦しております。
城下町金沢の面影を色濃く残す長町武家屋敷跡にある九谷焼 鏑木商舗は、ショップのほか、工房やギャラリー、九谷焼の器で料理を提供する食事処を備えており、九谷焼をさまざまな側面からお楽しみいただけます。
金沢にお越しの際には、お気軽に来店下さいますようお願い申し上げます。

長町武家屋敷と鏑木商舗

長町武家屋敷は、藩政時代の情緒を残す伝統環境保存地域および景観地区として金沢の中でも人気のエリアです。
金沢の繁華街、香林坊や片町まで徒歩圏内という立地は、伝統と流行が融合する金沢を象徴しているかのようです。
夏にはこの界隈をはさむように流れる2つの用水、大野庄用水と鞍月用水にホタルが舞い、冬には通りに残る土塀に(薦こも)が掛けられるなど、四季折々の変化をゆったりとした時間と共に感じることができ、国内外からの観光客だけでなく地元金沢の人達にも親しまれています。
伝統家屋を用いた展示・販売スペース「九谷ミュウジアム」と食事処「 おいしいいっぷく鏑木」、そして武家造りを現代風に再現し、若手職人の作陶・絵付工房としても機能する「春日山窯木米庵」は、歴史ある町の風景に欠かせない存在となっています。

鏑木商舗と地域・社会貢献

鏑木商舗は観光でお越しのお客様からだけでなく、地元の常連客からも愛され続けています。地元のお客様からは慶弔行事のご進物や食器のご新調、飲食店開業の際に食器や備品のプロデュース、県内外の企業から記念品やノベルティーなど、様々なご用命を頂いてまいりました。また、石川県物産協会のメンバーとして、金沢の魅力を発信するべく、全国百貨店で開催されている物産展にも毎年参加させて頂いております。

過去には、石川県民を中心に、金沢のまちの魅力とその文化・歴史を再発見して頂くための「まち博」の一環として、「親子絵付け体験」を毎年開催したり、金沢市の子育て支援策「夢ギフト」として、市内に誕生した子供達へ九谷焼五月人形などの贈り物を担当させていただきました。現在も、全国の幼稚園・保育園のために、子供達にとって安全で使い易い食器を製造・納入し、かげながら食育をサポートする活動も行っております。

器と食の店 おいしいいっぷく鏑木

「九谷焼は色が多用されていて、食器としてどう取り入れて良いのかわからない」とのお声をよく耳にします。確かに九谷焼は大胆な色使いが特徴で、主張が強すぎると感じられるかもしれません。しかし、奇を衒った派手な器というだけでは、360年もの歳月に亘り人々に愛され続けることはなかったはずです。独特な中にも愛嬌や味わいがある。様々な色や模様の組み合わせの裏にも、飽きずに末永く使うための工夫がある。料理を盛り付けた時、料理を食べ進めた時、そして食べ終えた時、それぞれの時々で料理の華やかさ、美味しさを上手く演出してくれる、それが九谷焼の魅力です。そんな九谷焼を現代の食卓にさりげなく取り入れたスタイルを提案したい。金沢近郊の魚介や加賀野菜など地元の旬の食材、そして金沢のおもてなしを九谷焼で楽しんで頂きたい。そんな思いで「おいしいいっぷく鏑木」は始まりました。

九谷焼の伝統を次世代へ…

NPO法人 金沢九谷倶楽部は2006年1月に金沢九谷の保存・研究・職人の育成を目的に設立されました。
現在、鏑木商舗内にて、明治・大正期の九谷焼の展示やプロ養成の色絵教室を開催するなどの活動を行っています。また、金沢市のイベントに参加し、親子絵付け体験を行うなど九谷焼の広報にも力を注いできました。自社工房では、若手の女性職人たちが作陶・絵付け技術を習得すべく、制作に励んでおります。
工芸の盛んな金沢を拠点に、全国各地に金沢九谷を普及させるべく、今後も積極的に活動を行っていきたいと考えております。

特定非営利活動法人金沢九谷倶楽部

理事長 鏑木 基由

※現在、絵付け体験および工房見学は行っておりません